うめまつ

灰とダイヤモンドのうめまつのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
4.0
たった1日に、人生の不確かさも恋の悦びも信念の脆さも運命の皮肉さえ凡ゆるものが凝縮されて、白黒の画面の中混ざり合わずにチカチカと点滅していた。マチェクがこの時代この国に生まれていなければ、どんな未来を描いたんだろう。ライフルをペンに持ち替えて、恋人に情熱的な詩を贈ったりしたかもしれない。黒いサングラスをカメラに替えて、 焼け野原以外の色とりどりの風景を写したかもしれない。灰になるのを見送るだけの青春なんて悲し過ぎる。

粗筋を頭に入れて挑んだけど、恐らくこの物語を1/5も汲み取れていないと思う。日頃の勉強不足が祟って所々意識が遠のきそうになったけど、痺れるほど見事な構図が挟まれるのでその度に引き戻された。ウォッカのグラスに次々と火を付けていくシーンが好き。逆さに吊られたキリスト像、頭上と足元に咲く花火、葬列のようなダンス、無情なほど眩しい朝日、白く白くはためくシーツ。緊張と寂寥が振り子のように揺れ続ける、美しい走馬灯のような100分間だった。
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