Mikiyoshi1986

蒲田行進曲のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

蒲田行進曲(1982年製作の映画)
4.3
1月12日は暴力の美学を貫いた名匠・深作欣二監督の命日。
今日で没後15年を迎えます。

それまで時代劇・任侠映画中心だった東映で『仁義なき戦い』を大ヒットさせた深作は実録路線という新しい風を吹き込んだ立役者。
80年代からは東映以外で文芸映画を手掛け始め、その中でも代表作に挙げられるのが本作『蒲田行進曲』であります。

当時深作と愛人関係にあった松坂慶子をヒロインに迎え、無名に近かった風間杜夫と平田満が一躍名声を得るに至った松竹人情ドラマの傑作!

東映時代劇のスター大倉銀四郎。
彼の舎弟として"銀ちゃん"と慕い続ける大部屋俳優ヤス。
そして大倉の子供を身籠りながらもヤスとの結婚を押し付けられる小夏さん。

まるで子供のような大倉に愛想をつかすことなく、彼への情愛と母性愛からヤスと一緒になる小夏ですが、それぞれの気持ちの変化が本当にいじらしいの面白いのって。
ドリフのコントでも愛着のある最大の見せ場「階段落ち」を起点として繰り広げられるドラマは今も心に深く刻まれています。

暗いストーリーをこんなにも軽やかなタッチで描いた深作の手腕は素晴らしいの一言だし、
それは東映のやくざ気質を人情の松竹に持ち込んだことで生まれた化学反応とも云えるでしょう。

そしてまぁ、なんたってあのラストよ!
虚実入り乱れた映画世界で、あの荒唐無稽なラストで、とんでもない感動を我々に投げつけてくれた深作よ!
愛だよ!これぞ映画愛、キネマ愛だよ!
映画の舞台裏を描いた作品はトリュフォー「アメリカの夜」、ゴダール「軽蔑」、ヴェンダース「ことの次第」とかとかいっぱいあるけども、日本じゃ本作一辺倒でしょう!

もし岡田社長のきまぐれで東映で製作されてたら一体どうなってたんでしょうね。
私の中では説得力重視で大倉が若山富三郎、ヤスが川谷拓三、小夏が池玲子です。(大コケ間違いなし!)

そして先週よりスタートした2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』にはなんと本作のお三方が登場!
松坂と風間は西郷隆盛の両親役、平田は大久保利通の父親役で出演しており、実に36年ぶりの集結。
しかも大掛かりなセットで組まれた西郷宅には珍しく「長めの階段」が設置されております。
こ、これはひょっとすると…?
『西郷どん』、もう目が離せません!
Mikiyoshi1986

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