タケオ

ワイルド・スピードのタケオのレビュー・感想・評価

ワイルド・スピード(2001年製作の映画)
3.4
 今やすっかり「知能指数0以下の底抜け脳筋'アホ'アクション超大作」として確固たる地位を確立した『ワイルド・スピード』シリーズだが、その記念すべき一作目となる本作『ワイルド・スピード』(01年)は、『ハートブルー』(91年)や『フェイク』(97年)に代表されるような「潜入捜査官が犯罪者と友情を結んじゃう系ムービー」の系譜にあたる、比較的オーソドックスな作品となっている。
 しかし改めて鑑賞すると、やたらめったらとバカのひとつ覚えのように「俺たちは家族(ファミリー)だ」を連呼するだけの、まるでファスト・フードのような軽〜い「人間ドラマ」は本作からすでに健在。「いかに規格外の前代未聞なアクションをぶちかますか」'だけ'に重点を置いた『ワイルド・スピード MAX』(09年)以降の作品よりはまだマシなレベルというだけの話であり、正直「人間ドラマ」としてのレベルはあまり高くはない——というか、正直いって相当低い。主人公のドミニクを演じたヴィン・ディーゼルは何度も脚本をリライトさせることでようやく出演を決めたとのことだが・・・ん?ちょっと待て、何度もリライトしてこの脚本なのかよ ‼︎え、マジで ⁉︎準備稿は『ワイルドなスピード! AHO MISSION』(15年)レベルのものだったということか ⁉︎いや、それなら逆にそっちも見てみたかった気もするけど——と、何から何までツッコミを入れたくもなるような本当に頭の悪い内容ではあるが、ところがどっこい本作は、結果的に世界各国で大ヒット。ヴィン・ディーゼルやポール・ウォーカーら主要キャストたちを一躍トップスターへと押し上げた。なんだかんだで、ガサツな脚本が描き出した'家族愛'というこれまたガサツなテーマは、世界中のガサツな人々の心をガッシリと掴んだのである。さすがに色々とガサツすぎる気もしなくはないが・・・。
 とはいえ、『ブリット』(68年)『バニシング・ポイント』(71年)『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(74年)『トランザム7000』(77年)をはじめとした伝統的な「ホット・ロッド映画」をアメリカ西海岸の「カスタム・カルチャー」へとリンクさせることで現代に蘇らせてみせたのは、やはり本シリーズの大きな功績のひとつだといえるだろう。石油ショックやサブプライム・ローンの破綻の煽りを受けてアメ車の人気は急落、それに伴い日本車やハイブリッド・カーが売れ始めたことで、アメリカの自動車産業は一気に衰退してしまった。しかし、その精神は完全に失われたわけではない。日々目まぐるしく進化していくカスタム・カルチャーの根底には、今なお自動車産業黄金期のレガシーが息づいている。「カスタム・カルチャー」という世界を娯楽エンターテインメントへと昇華させてみせた『ワイルド・スピード』シリーズは、60~70年代に繁栄を極めたアメリカの自動車産業の「魂」を新たな時代へと引き継ぐ架け橋なのである。
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