これも録画して見るのを楽しみにしていた作品。
小津安二郎観賞3作目だが、家の中の撮り方がお茶漬けの味とそっくりでびっくりした。
右奥の玄関から「ただいま」と帰ってくる笠智衆を手前の廊下から迎えにでる原節子のシーンのアングルが殆ど同じ。その他、パチンコも出てくるし、この監督には決まった美意識があって、揺るがないんだと思った。
ラスト近く、奥の座敷に横を向いて座ってうな垂れる原節子を両端に襖を二重に重ねて撮ったシーンは美しい絵のようで見惚れたが、悲しいシーンなのにこれほど念密に構成された美しさに違和感も感じた。
3作見て思ったが、特にこの作品はなかなかショッキングなストーリーなのに、観賞後、監督の突き放したような視線を感じてヒヤッとしてしまった。一見、原節子が夫の元に帰って一件落着のように思えるが、その覚悟はそうするしかないんだという悲壮なものに思える。
山田五十鈴も子供思いの母のようで、最後まで自分の事しか考えていない。
笠智衆は悲しんでいるのだろうが、淡々と同じ日々を過ごす。
何より原節子が山田五十鈴に喪服で報告をするシーンのバックに流れる音楽の違和感。
一つの家族で何が起ころうとも、大きく世の中は変わらないんだ、と言っているように思えてしまった。