Inagaquilala

スローなブギにしてくれのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

スローなブギにしてくれ(1981年製作の映画)
3.6
この作品の浅野温子は見事に輝いている。もしかしたら、この作品が彼女のベスト・ムービーかもしれない。監督が藤田敏八で、脚本が内田栄一。マイ・フェヴァリット・ムービーのひとつである秋吉久美子主演の「妹」と同じコンビだ。とはいえ、「妹」とは違い、原作の縛りがあるためか、内田栄一の脚本もイマイチ冴えがないし、彼一流の遊びも少ない。というか、原作の片岡義男の世界とは、内田はやや嗜好が違うのかもしれない。

ということで、とにかくこれは浅野温子を観る作品だ。彼女に絡む中年男を山崎努が演じているが、これが見事に浅野温子にハマっている。年上の男性といるほうが、浅野温子はおさまりがいいのかもしれない。いちおう恋人役は古尾谷雅人なのだが、どうにも若すぎて、浅野温子を御しきれない。山崎努はムスタングの男として登場するのだが、このニヒルでハードボイルドな感じが、浅野温子にはベストマッチだ。

いわゆる若いカップルに中年男が絡む「冒険者たち」のパターンだが、おさまりがいいのは、やはり山崎との恋愛模様だ。それほどの事件も起こらず、ただスケッチのように物語は進むのだが、これが2時間10分の作品だったというのは、やはり時代なのだろうか。圧倒的に長い。その時代に自分も観たはずなのだが、これほど長いとは感じなかった。いまの映像づくりが、いかにスピード感を要求されている証明かもしれない。

それにしても、南佳孝の主題歌は最高だ。約めて言えば、この曲を聴かせるために2時間超のプロモーション・フィルムをつくったのではないかと思えるくらい最後のスローなブギは決まっている。他の南佳孝の挿入歌もムード抜群で、これが2時間10分ではなく、1時間30分くらいの作品なら、立派に音楽映画として通用するかもしれない。何度も書くが、とにかくこれは浅野温子を観る作品。
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