<概説>
男は過去を振り返る。強権的な父。慈愛に満ちた母。あまりにも早くに死した弟。歪な幼少時代は今も彼を苦しめ、頭を悩ませる。内心の救済はどこにあるのか。第64回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した、奇才テレンス・マリックによる人生ドラマ。
<感想>
序盤に宇宙的美意識に満ちたシークエンスが挿入された時、『ボヤージュ・オブ・タイム』と同じことしてるのかとウンザリしました。
美しい映像ではあるけれども、単に美しいだけと。
とはいえその一点のみで作品を酷評するのはいい鑑賞者とは言えません。耐える。なんとか耐えきる。
そして再度のドラマパート。予想通りのローテンポ。
しかし。あれれ。もう不思議と苦にならない。
いえ苦にならないなんてものじゃありません。楽しい。
あの映像美によって緩やかな作品のリズムに感覚を合わせてみると、まず主演ハンター・マクラケンの名演に気がつきます。
威圧的な父親への反発と、捨てきれない家族への愛情。それをないまぜにした感情表現をあの齢で!
子役が凄まじいと、鑑賞者の視点もついそちらへ。
幼少時代のすべてが輝かしい世界。
水滴ははじけ。爆竹は木を穿ち。子どもらは狂乱する。
なんと素晴らしき人生。それが如何に苦痛であろうと。
オフビートが過ぎるので万人には勧められませんが、そこを越えると奇妙な満足感が得られる一作でした。