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雪国のodyssのレビュー・感想・評価

雪国(1957年製作の映画)
3.0
BS録画にて。
川端康成の有名な小説の映画化。

東京の画家(池部良)が、新潟県湯沢町の温泉旅館で駒子(岸惠子)という芸者と恋愛関係になるという話です。

モノクロ映画なので、冬の湯沢町における雪の存在感がくっきりと表現されています。
また、地域の人々の生活の様子もさりげなく描き出されている。

それに比べると、画家と芸者の恋愛模様は、今の時代からすると浮世離れして見えます。
時代は昭和初期で、そろそろ戦争の影が濃くなってくる時期なのですが、画家はあんまり仕事をしているようには見えないのに、パトロンがいるとかで、雪国の温泉旅館に長期滞在していても困らない程度のカネがあるらしい。
いい身分ですね、と言いたくなっちゃう。

それに比べると、駒子は色々と家族やその他のしがらみを抱えていて大変なんです。
この映画には八千草薫も出演しており、当時彼女は25歳で、岸惠子より一歳半年上なんですね。でもこの映画では十代にしか見えない。岸惠子のほうがずっと年上に見えます。

女性二人が、東京に行った経験、或いは東京に行きたいという気持ちを抱えているのに、池部良演じる画家は東京から雪国の温泉旅館にたまに来るだけの存在。
彼の根城は結局東京にあるわけで、妻子と別れるわけでもない。

そんな、桃源郷としての雪国の温泉町。
今どき、こんな小説も映画も作れないと思うなあ。
川端康成はいい時代に生きていたのだな、と思い知りました。
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