イチロヲ

緋牡丹博徒 お命戴きますのイチロヲのレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 お命戴きます(1971年製作の映画)
3.5
生活困窮に喘いでいる寒村を訪れた女博徒(藤純子)が、村の存続の岐路に立たされているヤクザ者(鶴田浩二)と出会う。明治時代を背景にして、気骨ある女博徒の活躍を描いている、人気シリーズ第7弾。

帝国陸軍の跋扈と文明開化の暗部をメインに据えているシナリオ構成。本シリーズは、義理人情を重んじるヤクザ組織と非情を貫くヤクザ組織の衝突劇が定番パターンなのだが、本作では国家が相手となっている。

閉鎖的な世界を舞台にしているため、シチュエーション移動の面白さは若干ながら減退。その代わり、外界では生きられない人間のジタバタ劇が緻密に描かれており、シリーズの雛形から、良い意味で逸脱している。

加藤泰の映画術では、弱小組織の葛藤劇を長回し&長台詞で描写するところが印象的。まるで錦絵に描かれている人々が、そのまま動いているような錯覚がする。普通の生き方ができない女性の悲哀へと落とし込みながら、スパッと終わらせる手法も美しい。
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