ニコラス•ローグ監督の不朽の名作をようやく鑑賞。
ローグ監督はトリュフォー監督の『華氏451』等の撮影監督出身ということもあり、言葉に出来ない圧倒される映像美。
自然ドキュメンタリーのようでもあり、動物や虫の目を覆うようなリアルな映像も多かったけど、動物苦手な私でも興味深く観入りました、いや〜素晴らしかった。
◉原題『WALKABOUT』のこと
オーストラリアの先住民アボリジニの男は16歳で放浪の旅に出る。大地の恵みを食べ必要なら生き物を殺し、自給自足の生活を経験する通過儀礼であり成人の儀式のこと。
◉結末は隠したあらすじ
シドニーで暮らす14歳の姉(ジェニー•アガター:撮影が2年遅れた為に撮影時16歳、それにより監督がヌードシーンを決行)と6歳の弟(リュック•ローグ:監督の息子)は父親の運転する車で原野にピクニックに連れ出される。
そこで父親が突然、子供たちに銃を向け発砲し無理心中を図ろうとするが、子供たちは逃げ、父親は車に火をつけ自殺してしまう。
2人は制服姿のまま、灼熱の太陽に照らされながらも荒野を彷徨い歩き、食糧が底をついた時、言葉も通じないアボリジニの青年(デヴィッド•ガルピリル:ダンサーでもある)に出会う。
それからは3人で行動を共にし、青年が水の在処を見つけ、狩をし食べ物を与え、星空の下で眠る日々。
弟は青年と言葉が通じなくてもコミュニケーションを取れるが、姉は一定の距離を保っている。青年は姉に恋心を持ち、旅を終わらせ廃屋で一緒に暮らそうとする。身体に羽根を付けペイントした青年は心身共に成長し一晩中求愛ダンスを踊り続けるのだが...
◉所感
冒頭から都会と原野が交錯する映像、伝統的なディジュリドゥの音に叙情的な音楽、自然の美しさと厳しさ、野生と文明の対比、思春期の性の目覚めと戸惑い、自然界の摂理...様々なものを目にして思考を巡らす。
父親の死から姉弟だけで生き抜く力。自死はダメ。生を受けたら生き抜く方法を自分で見つける。
文明を知ってしまうともう戻れないかも知れない。
ジェニー•アガターが一糸纏わぬ姿で泳ぐ初々しいヌードが語り継がれているのも解る。まるで少女神話のような姿が神々しい。
カッティングの魔術師と呼ばれたローグ監督の逸品、お薦めです。