映画おじいさん

太夫(こったい)さんより 女体は哀しくの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

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とにかく遊郭の遊女たちが可愛い! 乙羽信子、扇千景は安定の可愛いさだけど、特に今っぽい顔立ちの環三千世が最高! 彼女の和装姿って意外と少ないような。好みな年増の東郷晴子はいつも通り目立ってなかった。

そんな彼女たちを廓ババアの田中絹代が大阪弁(京都弁には聞こえなかった。そういう設定なのかな)で言いたいだけな叱言を言って回る冒頭から映画にひきこまれた。

しかし廓群像劇というべきドラマがかなりイマイチ。演出が悪いのか。

はすっぱな女を演らせたら上手い淡路恵子が、知能が低くて旦那に売り飛ばされた女という珍しい役どころを熱演しているものの何だかパッとしないというかカラ回り。 淡路恵子はすごく良いのに。

遊女からうどん屋の女将という小さな幸せを掴んだものの目の病で失明していく東郷晴子にも、演出が悪いのか、可哀想とも何とも思わない。ひょっとして私の心が悪いのか。

母親に遊女にさせられ金をせびられながら、金のために今でいうソープランド嬢みたいなのに転身して、あげくはアル中みたいになってしまう扇千景も熱演な分、なおさらシラけてしまう。

共産主義思想に傾倒してニセ共産主義者に騙される乙羽信子も悲惨な割にはドラマチックな盛り上がりに欠けた。

ただ、そのニセ共産主義者に「長い廓生活でお前は心と体が別々になってしまったんだよ!もうそれは元には戻れないんだよ!」(大意)と罵られながら乙羽信子がレイプされるところは凄まじい。
それには止まらず、乙羽信子の現夫に向かって、こいつはオレの体が忘れられないんだよ的なことを言うのも凄い。

偉そうに言えば、そこ以外は演出が失敗していると思う。それで悲惨な結末とは…。好きになれません。

*途中で一部だけ雰囲気が異様になる老太夫の登場シーン。どう見たって女優ではないし、あの老太夫は誰なんですか? 本人出演? その本人が分かりません。