広島カップ

夕やけ雲の広島カップのレビュー・感想・評価

夕やけ雲(1956年製作の映画)
3.5
下町で魚屋を営む昭和の一家の話。
子供が五人いるこの家族の上から二番目である高校生の長男を中心に物語は進む。
彼には船乗りになるという夢があり、また遠くに住む女性に密かに恋心を抱いていたりして彼なりの青春を送っていた。

しかし周囲の状況が許さなかった。
好きな女性は遠ざかり、親友の同級生も引っ越してしまい、可愛がっていた一つ下の頑是ない妹は大阪の親戚に里子に出され、そして一家の大黒柱である父を突然失う。彼の周りからドンドン人が去り、一家を支えて行くために彼は夢を諦め魚屋を継ぐ人生を歩いて行くのだった。
生きる事に必死だった家族にはしばしばあったであろう昭和の青春物語。

そんな彼の厳しい青春を描いている作品なのだが意外な修飾がされている。
親友と手を繋いで歩く黒い詰襟姿の二人。離れ離れになることを寂しく思い橋の欄干に並んで腰掛けながら互いの足をブラブラさせてぶつけ合う二人。
ただ単なる青春物語では終わらない「オッ」となる色付けでした。
白黒作品だが仮にカラーだったとしたら、高台から彼が眺める遠い空に広がる夕やけ雲の色は少し熟したものに見えたかもしれない。
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