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たそがれ清兵衛のtjZeroのレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
3.8
幕末の東北の小藩。城勤めの侍、清兵衛は妻を亡くしたばかり。
幼い娘と老母を抱え、生活は楽ではない。同僚の誘いを毎回断り、そそくさと帰宅するため、ついたあだ名が”たそがれ”。
そんな彼が、剣術の腕を見込まれ、藩の政敵を討ちとる刺客を命じられるのだが…。

決斗の前、清兵衛(真田広之)が刀を準備するシーンが印象的。
丁寧に分解し、砥石で丹念に研ぐ。
胸の高まりを抑えるように黙々と。刃面と共に、彼の表情も研ぎ澄まされていく…。

…この場面に象徴されるように、全編にわたって細部をおろそかにしない、手堅い出来栄え。

山田洋次監督って、そうした細部というか、小さなコミュニティ内のお話を描くとやっぱり巧い(”寅さん”シリーズの柴又界隈の描写みたいに)。

本作もほぼ、城下の小さな村だけで展開。
ラストの決斗も、小さな民家の中。
この死闘の迫力と緊張感が、只者ではない。
わが国有数の活劇俳優である真田と、舞踏家・田中泯の一騎打ち。
両者とも、手の指先、爪先まで神経が行き渡っている様な繊細で鋭い動き。
”殺陣史”に残りそうな名バトルだと思う。
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