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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序のtakのレビュー・感想・評価

3.5
「ヱ」とか「ヲ」とか変えちゃって何がしたいの?と思って新劇場版は映画館で観ることはなかった。今だからできる技術使った表現方法で撮ったリブート版が作りたかっただけ?

確かに新劇場版第1作「序」は、テレビシリーズにほぼ準拠した内容。第三東京市にシンジが呼ばれたその日、彼は使徒と呼ばれる謎の生命体に遭遇、父が働く組織NERVの基地に着くが早いか、見たこともない汎用人型決戦兵器たる人造人間エヴァンゲリオンに乗って使徒と戦えと命じられる。父から愛情を受けた記憶もなく、周りに命じられるままに逆らわずに生きてきた少年は、想像もしなかった試練に巻き込まれる。セカンドインパクトと呼ばれる出来事で何が起こったのか。重圧と認められない悲しみから、エヴァに乗りたくないと言うシンジ。しかし再び使徒が襲来し、NERVの基地も危機に陥いることに。テレビシリーズの前半の、「ヤシマ作戦」までを再構築した内容である。

「序」で印象的なのは、父ゲンドウから認められないシンジの悔しさと寂しさ、満たされない気持ちが全編を通じて描かれていること。一方で綾波レイは父ゲンドウと直に会話し、父を悪く言うシンジには平手打ち。ゲンドウの割れたメガネを大事そうに持つ彼女に対するシンジの複雑な気持ち。それでも現実に立ち向かい、少しだけシンジが成長する姿がいい。

レイの元に駆けつけるゲンドウの回想シーンとラストのシンジの行動。劇場版だと二つが重なるのが分かりやすい。ヤシマ作戦前後は名セリフも出てくるいいエピソードなのだが、「序」では意外にあっさりしているのがちと残念。

僕らは巨大ロボットアニメで育ったけれど、動力や繰り出す兵器の威力、活躍を支える組織や施設など背景については深く考えることもなかった。マジンガーZは光子力ってので動くんだすげえな。そんな程度。庵野秀明監督は大規模な作戦を決行するには現実的にどのような動きをするものかを、明確に示してくれる。ヤシマ作戦の為に日本全国の電力を一箇所に集中させる過程を、物資や設備、それを支える発電所の様子などを克明に描いていく。それは大作戦であること、それをシンジが最前線で担うという重さでもあるけれど、どれだけ多くの人々が関わって 世の中動いているのかを示してくれることでもある。「シン・ゴジラ」はそのさらなる発展形で、政治の場まで含めて危機に立ち向かう現実を示したのだな。

そしてラストシーン。渚カヲルは「また三番目」「会えるのが楽しみだよ、碇シンジ君」と意味深な言葉を残す。このミステリアスな感じがエヴァだよねー、と思うが、「序」で感じたリブートとしての安心感は、この後の「破」「Q」で、幻だったと気付かされるのだ。
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