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ネオ・ヒロイック・ファンタジア アリオンのscaflocのレビュー・感想・評価

3.6
 公開時に観たこの作品を、50歳になった今、改めて観直すと、滅多にテレビでかかったりしない作品だけに、余計に感慨深い。
 さまざまな構造的問題があるが故に、必然的に傑作になり得ない宿命(これがどういうことなのかを知りたい人はclubhouseで僕に質問してください)を持ちながら、観るたびに涙が流れてしまうのは、ノスタルジーだけではない。安彦良和の左翼としての、青春の純粋な理想像がそこに込められているからだ。
 権力を放棄することを前提としている政権奪取。力無き、虐げられた民衆の一員となり、持って生まれた恵まれた力を振るう。そういった共産主義的理想がアリオンの中にはある。親だろうが親戚だろうが、力有る者は次々と粛清されていくのも無理からぬことだ。
 それだけではない。さらにギリシャ神話とて人間が創ったものだからこそ、そこにはどのような、真に人間臭い、神話では無い人間的な物語、つまり真なる歴史は実際にはどうであったのか、という安彦漫画としてのアプローチの最初の一作なのである。こんな原作が、一つのアニメ映画として、綺麗にまとまるわけがない。
 それでもなんとなく、最後まで観れてしまうのは、やはり安彦良和という作家の稀代の天才性故に他ならない。のちに安彦良和はアニメ作家を辞めて、本格的に漫画作家になってしまうのだが、だからこそ、傑作でない傑作として、他の作家の作品にはない光を放つ。その光は本当に美しい。
 あと、主題歌サイコー! 後藤恭子はこれの主題歌と『セーラー服反逆同盟』だけが特筆すべきキャリアだが、凡百の経歴に比べれば、その2つは永遠に輝き続けるキャリアだ!😁
A6B7C5D9E9→36
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