こたつむり

シーラ号の謎のこたつむりのレビュー・感想・評価

シーラ号の謎(1973年製作の映画)
3.9
豪華ヨットに集められた芸能関係者たち。彼らを待ち構えていたのは一風変わった推理ゲームだった。それぞれの思惑が錯綜する中、響く悲鳴。そして、惨劇。はたして犯人は誰なのか…それは過去に起きた“ひき逃げ事件”がカギだった―。

…なんてミステリ映画として直球ど真ん中。
もうね。序盤から伏線張りまくり。脳みそフル回転。全く先が読めない展開が続きます。
正直なところ、ミステリに限っては勘が働く方だと自負していたんですが、終盤まで真相を掴むことが出来ませんでした。

まあ、登場人物の名前とかね。性格とか職業とか推理ゲームのルールとかね。そういう基本的情報を整理するのでいっぱいいっぱいだったからね。仕方ないですよね。あ。ま、負け惜しみじゃないからね!

というわけで。
僕のパソコン黎明期のような脳内メモリでは処理が大変なほどに。密度が濃い情報量でお腹いっぱいの逸品。出来れば、テロップとかで名前や職業を表示してもらいたい…なんて思ってしまうヤワな現代人にはハードルが高いかも。ぐふ。

ただ、本格的な事件が起きるまでに中弛みするのが残念なところ。推理ゲームが緊張感を保持してくれるんですけど、やっぱりゲームはゲームですからね。なかなか興味を惹くには弱いんですね。

それと、登場人物が揃いも揃って魅力的でないのも痛かったですな。更に探偵役が明確じゃないですからね。感情の置き所が難しくなるんですよね。まあ、そういうときは、上空から俯瞰して楽しむ…のが一番なんですけれども、それを容易にさせないほどに情報量が多いのですな。だから、ついつい目線を登場人物と同じ高さに設定したくなるんです。

あと、難点と言えば、賛否両論分かれそうな結末も。あー。でも、これはネタバレになるから書けないにゃ…。

まあ、そんなわけで。
色々と厳しいことを書きましたが、真正面からミステリを描く映画が少ない中、本格推理に挑戦していることに本作の価値はあります。

ですから、邦題が醸し出す古典ミステリの雰囲気にピンときた方ならば。灰色の脳細胞を駆使して楽しむ作品として丁度良いと思います。上手くハマれば「あー。それが伏線だったのかあ」なんて喜びが混じった“騙された感”が心に拡がるんじゃないでしょうか。とは言え、期待し過ぎるのも毒なんで、「ふーん。こんなのあるんだー」くらいで臨むのが…丁度良い按配ですね。
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