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幽霊と未亡人のRのレビュー・感想・評価

幽霊と未亡人(1947年製作の映画)
4.4
タイトルが斬新笑 普通にファンタジックなメロドラマなのかと思って見始めたら、内容結構はげし目、ってか主人公の女がすごい。死んだ旦那の家族と一緒に住んでた強情な未亡人が、もうあんたらとは暮らせない!と娘とメイドを連れて家を出て行くとこからはじまり、幽霊の取り憑いた屋敷を安く借りて、最初は旦那の持ってた株の儲けで暮らしてるねんけど、その会社が倒産して、暮らしに困ったところで、彼女の美貌に魅せられた船長の幽霊が、オレが助けてやるよと、自分の船上での体験を彼女にタイプさせて小説にして、売れたお金で暮らせよ、ってなる。ほんでその幽霊と大いに懇ろになってると思ったら、主人公、出版社で出会った男と恋に落ちて、幽霊がアイツはやめとけと助言するんやけど、自分は所詮幽霊やから…と身を引く。で、メイドもやめとけって言うのだが、口出しすんなよって言って、付き合ってたら、その後とんでもない事実が……とにかく自分では何もできない未亡人が、美貌をダシにひょいひょいと人の助けを渡って歩き、したたかに生きようとするのだが、結局牢獄のような場所で孤独な人生を送る…という何とも言えなず辛辣な内容で、女性が今より全然生きにくかった時代のひとつの不幸の形を、寓話的に描いてるんやと思う。けど、これはまさしく現代にも通じてて、とにかく自分以外の人に頼って、外部要因に任せきりで生きようとする人間は、どれだけ自由を求めても、最終的に自由を得られない、という厳しい現実を描いているんだと思う。だから、最後は一見感動的なように見せかけて、非常にダークで皮肉な終わりかたに感じられる。ただ実際そうでない見方もできるようで、素直に感動する人もたくさんいるらしいんやけど、この映画でキュンキュンきてる人は、実に怖い。この主人公と同じ境遇にならぬよう気をつけたほうがいいよと思ってしまう。普通に考えて、生きてる間に幸せになれなかった人が、死んで幸せになるなんて、あり得ない。自分の人生の幸福は自分が責任を持たなければ。絶妙に心をざわつかせる流れを見事なほど自然に作り上げてて、すごい演出だなと感動した。映像と音楽もすばらしかった!
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