理由もわからず泣きました。
椅子で寝るシーンの反復は、いぬもきちんといつもの場所にいてかわいらしいんだけど、何十年後かにはもちろんいなくなるんだよな……。痕跡の現出とでもいうのか、本質は何も変わっていないのに、映画内の過去が、固定された場所に立ち現れてくる。
幽霊と肌の接触をするということがどういうことなのか、あの手元を映すカメラが永遠。幽霊を追うことのできるいぬがいっしょに扉を走り抜けていく微笑ましいシーンは、最高のラストに流れ込む。
「海を見ていると正直になれる」。ベランダでしか心を吐露しない船長。部屋とベランダの境目で、彼女と見たかった風景をぽつぽつ並べていくシーンが一番感動した。窓も扉もひとりでに閉まる。