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ゴースト・ドッグのBeSiのレビュー・感想・評価

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)
4.8
すいません暫くはジム・ジャームッシュ祭りです......。武士道精神を説いた書物 "葉隠" を愛読する殺し屋ゴースト・ドッグと年老いたイタリア系マフィアとの対決を描く。ジム・ジャームッシュとしては異色のクライムドラマ。どんなものなのか全く予想が出来ないまま鑑賞し始めました。これめっちゃ面白い......

まず、そもそも "葉隠" とは何なのか。
江戸時代中期に書かれた書物で、肥前国佐賀鍋島藩士である山本常朝が武士としての心得を口述し、それを同藩士の田代陣基が筆録しまとめたもの。本作の冒頭でもあったように、"武士道といふは死ぬ事と見付けたり" という一文で始まる葉隠は、武士として恥をかかずに生きて抜くために死ぬ覚悟が不可欠と主張していて、武士の教訓を説いている。姿を見せずして標的をただ仕留める主人公の様は、まさにゴーストの如く存在感が無く、サムライの如く精神が鍛えられている。実戦においては、銃を刀のように扱っているのが少し違和感があるものの、いとをかし(?)

また、本作が素晴らしいのは、現代に生きるゴースト・ドッグやギャングたちと世間の文化的隔絶を無くしている点。アイスクリーム屋のレイモンド(この人めっちゃ好き)やゴーストと同じく読書が好きな少女パーリーンと交流を深める彼の姿は、サムライではあるが動物や心を許した相手には優しいといったギャップがあって、心が和むし面白い。ギャングの面々も平均年齢高めで、普通に街中を歩いてるご老人でもおかしくない人たち。ゴーストが連絡手段として伝書鳩を使っていることに驚きを隠せずに食い気味になっている場面が凄い好き。まあ...ジムは細かい所で笑かしてくる芸が達者だこと。

従来のアクション映画にはない、殺し屋とマフィアの意外な一面が見れて、武士道を貫き通したゴースト・ドッグの姿に感動する静かなアクション映画。大好きです。
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