りょう

ゴースト・ドッグのりょうのレビュー・感想・評価

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)
3.8
 ジム・ジャームッシュ監督は、30年以上前に「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を観て夢中になりましたが、1995年の「デッドマン」やこの作品までを観たきりとなっています。
 相変わらずキャラクターの設定が独特で、この作品でも英語とフランス語の相互に理解できない会話をはじめ、個性的な登場人物の微妙にかみ合わないやりとりが印象的です。日本の武士道に傾倒するアフリカ系の暗殺者という設定だけでも物語の特徴を決定付けていますが、そこにRZAの劇伴どころか、ラップ好きなマフィアのボスというミクスチャーな雰囲気が絶妙です。
 なぜかマフィアの構成員は年配ばかりで、すでに衰退している組織なのかもしれませんが、まったく恐ろしさが漂っていないユルさがいいです。強盗に襲われそうになった老人が空手の達人だったりしたシーンも笑えます。
 当然読んだことがないので「葉隠」の一節なのかどうかわかりませんが、ところどころ引用される武士道の理念が寡黙なゴースト・ドッグのキャラを際立たせています。日本刀を使用した殺陣も披露しますが、さらに実戦のシーンもあれば、武士道を体現する視覚的な印象につながったと思います(アメリカ人が喜びそうなシーンなのであえてハズしたのかもしれません)。
 ジム・ジャームッシュ監督としてはエンタメ要素を強調した作品になっていますが、個人的には、めちゃくちゃチョコレートアイスが食べたくなるということで記憶していた秀作です。
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