【忠なる刺客】
ジム・ジャームッシュ監督×フォレスト・ウィテカー主演の武士道に忠実な殺し屋を描いた異色作。
〈あらすじ〉
一匹狼の殺し屋ゴースト・ドッグは日本の武士道精神を語った古典『葉隠』を座右の書に、とある古ビルの屋上で伝書鳩だけを友としてひっそりと生きていた。彼は若い頃、自らの命を救ってくれたイタリア・マフィアの幹部ルーイを主と仰ぎ、彼に忠義を尽くしていた。今回の彼の標的はルーイのボス、ヴァーゴが溺愛するひとり娘ルイーズに手を出したファミリーの一員ハンサムフランク。今回もみごとに相手を仕留めた彼だが、同じ部屋には街を去ったはずのルイーズが…。
〈所感〉
ジム・ジャームッシュ監督が考える「武士道」がそのまま現れたようなスタイリッシュでオシャレな異色作でなかなか面白かった。太った黒人のゴースト・ドッグがジョン・ウィックばりに疾風迅雷と敵を殲滅する様は見ていてワクワクする。まさにブラックサムライ。そして彼のアナログで拘りの強そうなライフスタイルがとても良い。伝書鳩を使ってやり取りしたり、日本の小説を読んだりと、日本人なら問答無用に反応してしまうような描写が多く、狙いすぎな感もするが、やはりそれが主題であり、アクセントになっているので有りかと。フランス語しか喋れないアイス屋の男と全く会話出来てないのに親友のようにお互い理解し合っているのが素敵。
「大事には心軽く対処すべし、小事には心重く対処すべし」
「家来が主を殺すのは武士道に反する」
「物事は七回呼吸する間に決断すべし」
「復讐の念から怨霊〈ゴースト〉となり決意を固めれば首を落とされても死ぬことなし」
「万事最後が肝心なり」
『葉隠』は私も読んだことあるが、このように名言のオンパレードで、武士の気概、忠義、在り方をこれ程丹念に記載した書物は未来永劫語り継がれるべき日本の財産であると感じた。男は死に様にこそ生き様が現れる。私もこんな男になりたい。