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楽聖ベートーヴェンのpikaのレビュー・感想・評価

楽聖ベートーヴェン(1936年製作の映画)
4.5
ほぼ見せ場しかないとか言いたくなるレベルの濃度!叙情感が半端ない。ベートーヴェンの伝記映画なのにこれぞフランス映画!ってな悲恋ドラマの割合も強くて何がメインなのかわからなくなってくるけどそんなんどうでもよろしい!ってくらい良かった。中盤から涙がせり上がって鼻の奥ツーン状態。
誰もが知ってる歴史上の偉人ではあるが人柄に関しては知る由もない対象の人物の紹介が上手い。女の子たちがキャッキャウフフしているシーンからずんぐりむっくりな大男がこちらに尻を向けフンフンと鼻歌歌ってるシーンへジャンプする意表の突き方、卵を投げつけ大笑いする流れ、隣家へ入って無言で空気を変えるシークエンスなど、見始めると秒で惹かれてしまう人物描写がめちゃくちゃ良い。
耳馴染みありまくりな曲なのに鮮烈な感動が湧き上がるようなタイミングで流れるベートーヴェンの名曲の配置が良い。運命の多用はちと笑えるが、どれも印象的に耳に残る。心底素晴らしい音楽だなと改めて映画が引き立てて魅せる。
難聴になってしまうシークエンスが最高。画で語り音で語る名シーン。巻き戻して見てもまた感動できるくらい良い。音を失い、音楽によって立ち直るということを映画だからこそな叙情性溢れる説明で見せる。素晴らしい。
ベートーヴェンを演じた役者の顔演技。アップ長回しに応える名演技。
晩年は涙無しには見れない。思い出すだけで泣く。史実かどうかはわからないけどフィクションアレンジがあったとしてもベートーヴェンという偉大な存在に惹かれ、遺した功績である音楽を聞きたいと思える余韻に包まれたので細かいことはどうでも良い。見終わって第九聞いてたら更にジワジワきました。
古いせいか切られたのかわからないけど繋ぎ目が変なところはあるしラストはイマイチだったが何日か余韻が残るくらい良かった。伝記映画としても音楽映画としても傑作。音楽そのものやエピソードで感動させるのではなく映画で感動させている、これこそ音楽家の伝記映画だろう、と思えた傑作だった。
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