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誰が私を殺したか?のMOCOのレビュー・感想・評価

誰が私を殺したか?(1964年製作の映画)
3.5
「裁判ではなんと申しましょう」
「あなた気づいていたの」
「ええ奥様」
「その事は誰にも言わないで」
「そうお望みなら」
「孤独じゃなかったのね、
 ありがとうヘンリー」

 イーディスは双子の妹マーガレットの夫フランクの葬儀に参列します。フランクの死因は心臓発作でした。
 イーディスは昔フランクと恋仲だったのですが、妹のマーガレットがフランクの子供を身ごもったために身を引き、街を出て18年が経過していました。
 しかし、18年もたった今日、妊娠が嘘だったことを知らされたのです。

 酒場の経営に行き詰まっていたイーディスは、大富豪フランクの元に嫁いだマーガレットへの怒りを抑えることができなくなります。
 イーディスは経営する酒場の二階の部屋にマーガレットを呼びつけるとマーガレットを殺害し、経営に行き詰まったイーディスが自殺したように見せかけると自分はマーガレットの服に着替え入れ替わりを計ります。

 屋敷に戻ったマーガレット(イーディス)は巧みに執事のヘンリーやメイドのジャネットや親戚・知人に気がつかれないように生活をはじめます(映画を観ているこちらは、マーガレットが屋敷で人と接する度にドキドキです)。
 しかしその日を境に、突然タバコを吸い始め、犬猿の仲だった大きな犬のデュークを可愛がりだすなど奇妙な行動をおこしてしまいます。
 
 翌日イーディスの遺体確認のため警察に呼び出されたマーガレットはイーディスと婚約?していた巡査部長のジムと再開します。ジムはあまりにも似ている妹に違和感を感じるのですがイーディスの演技に騙されてしまいます。イーディスはジムを愛しているのですが・・・。

 マーガレットはフランクの遺産相続に署名をした日、弁護士からフランクがイーディスにも5万ドルの遺産を残していたことを聞かされ愕然とします。

 ある日、マーガレットはパーティーでトニー(ピーター・ローフォード)という若い男に抱擁され激しくキスをされます。
 トニーはマーガレットの浮気相手(と言ってもトニーは高級車マセラティを手に入れるための付き合いで、マーガレットもトニーを愛している訳でもない気がします)で、さすがにトニーを騙すことはできずにマーガレットの殺害と入れ替わりに気づかれ、トニーに金品をたかられてしまいます。

 売渡証のない大量の宝石をトニーが質屋に持ち込んだ情報を聞いたジムは捜査の担当を志願します。その日の朝、マーガレットを訪ねたジムはマーガレットに暴力をふるうトニーを目撃していたのです。

 ジムはトニーの家宅捜査で大量の宝石と白い粉を押収するのですが、自宅に戻ってきたトニーとマーガレットの屋敷に出かけ「宝石はあげた物」と証言されてしまいます。その時白い粉がヒ素であったという情報がはいります。ジムはマーガレットに「ヒ素を投与することで心臓麻痺と同じ症状が起こる」と告げ急いで署に帰ります。埋葬されているフランクの検死をする必要が出てきたのです・・・。

 イーディスはマーガレットとトニーが共謀してフランクを殺害したことに気がつき、トニーを罵り揉み合いになるのですが今や信頼関係にあるデュークがトニーに襲いかかり噛み殺してしまいます。

 検死でフランクの体内からヒ素が出てきたことでマーガレットは逮捕されます、その時マーガレットはジムに「わかるでしょ、私がイーディスなの・・・」と告白をはじめるのですが・・・。そして裁判がはじまり・・・。

 マーガレットと入れ替わったイーディスは人に関わりを持てば入れ替わりがわかってしまうため、デューク(犬)だけが支えになっていくのですが、もともと「ハエも殺すことができない優しい人」、執事のヘンリーは本物のマーガレットにはない優しさに気がつき、とっくに入れ替わりに気づいているのですが気づかない振りをしていたとわかるシーンにホッとする思いがあります。

 ジムの心の中に生きる事を決めた毅然とした態度のイーディスがとても切なく映ります。

 人は他人の優しさを求め、綺麗な想い出の中に生き続けたい・・・。

 一人二役を演じる2度のアカデミー賞主演女優賞受賞歴を持つ『イヴの総て(1950年)』のベティ・デイヴィスの表情と巡査部長を演じるアカデミー賞助演男優賞受賞歴を持つカール・マルデンの表情が圧巻です。

古の映画は本当に良い。
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