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レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカのKKMXのレビュー・感想・評価

3.9
 年度末の諸々の作業が一段落したので、スカッと観れるガーエーを鑑賞。本作は20世紀に観た作品なので、実に20年以上ぶりに再鑑賞となります。何度観てもカウリスマキののっぺりハンサムなシュールさはジワりますね。


 時はソ連時代。シベリアの集団農場で暮らすのっぺりハンサムなバンド、レニングラード・カウボーイズ。地元では人気がない(というか人がいない、自由経済もない)ので、のっぺりハンサムな悪徳マネージャーがバンドをアメリカに連れて行きます。そして、ひょんなことから一向はメキシコを目指して旅をする、というガーエー。


 端々に挟まれるギャグは脱力系で、しょうもなさすぎるので笑う感じではないのですが、なんかジワるノリがあります。スタイリッシュな映像とこの辺のセンスが結びついてカウリスマキ作品はサブカルクソ野郎どもに愛されるのかもしれません。とは言え、ギャグの骨格は権力者vs下っ端という古典的なものです。ドリフと一緒ですね。メンバーから搾取してひとりだけ美味いモンを食っている悪徳マネージャーはさしづめいかりや長介といったところでしょうか。
 ビール缶のギャグや、なんとなくトレーラーを眺めながら故郷の集団農場を思い出すシーンはお気に入りです。

 昔はギャグで笑っていたような気がしますが、再鑑賞したところ、どちらかと言うと音楽面でグッときました。
 アメリカに来てからBGMはアメリカン・ルーツミュージックになります。ジャズ・ブルースやファンク、ロックンロールとなんかイイんですよ。ニューオリンズ編はアラン・トゥーサンみたいなピアノが流れたり、沁みます。
 夜の映像と音楽のコラボもグッと来ます。床屋の親父の弾き語りをバックに、鄙びた夜の街を走る映像は深く感じ入りました。歌詞も良い。「願っている、いつかこの苦しみが、過去の思い出になることを」みたいなブルース全開なのがシビれます。

 アメリカを回っているうちに、バンドはアメリカン・ルーツミュージックを身につけていきます。ロケンロールもさることながら、テキサスで演ったカントリーがとても良かったです。また、いとこと再会後の『ボーン・トゥ・ビー・ワイルド』はアツかった。カウボーイズのオリジナル(?)は盛り上がらないけど、スタンダードは結構客もノッてました。この辺は妙にリアルですよ。

 テレキャス使いのリードギターが巧い。また、凍ってない方のベースがエクスプローラーを使っていて、ミスマッチ感が逆にカッコよくて印象深いです。変形ギターでスタンダードな音楽やるのはイカします。

 本作で気に食わないのは、のっぺりハンサムガーエーにレギュラー参戦しているヒョットコさんが不在であること。ヒョットカーとしては至極残念です。チョイ役でもいいので出て欲しかったですねぇ。
 
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