荒野の狼

レッズの荒野の狼のレビュー・感想・評価

レッズ(1981年製作の映画)
5.0
1981年の映画であるが、当時、これほどまでに政治的に鋭い映画が公開・製作されたのは嬉しい驚きで、こうした映画が作られたこと自体が革命(Film on a Revolution Was a Revolution Itself)と評する記事もあるがうなずける内容。
実在の人物、ジョン・リードが主人公で、彼は第一次世界大戦のアメリカ参戦を“利益profit”のためと切り捨て、労働者の地位向上の為に活動、ロシア革命に賛同していく。アメリカを含む資本主義国はロシア革命を自国に拡がらないようにするために妨害、またアメリカ国内でも労働運動を不当に弾圧する様子が描かれる。ロシア革命前後のアメリカの労働運動は描いた映画として貴重で、当時の資本家・覇権主義のアメリカの問題は現代にも通じるものがある。
リードの恋人であるルイーズ・ブライアント(演ダイアン・キートン)と、若き日のノーベル賞作家ユージン・オニール(演ジャック・ニコルソン)とのニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジでの演劇活動などは当時の世相がわかる場面。他に歴史的人物としては、活動家の先輩としてエマ・ゴールドマンが登場。彼女がロシアに追放され、ロシアで幻滅する様子などが描かれる。ロシアの政治家ではレーニン、トロツキーらも登場するが、直接物語に関係してくるのはグリゴリー・ジノヴィエフ。この他、映画の随所に挿入される当時を知る実在の人物の短いインタビュー発言は、映画に歴史的裏付けを与えてユニークかつ効果的。ちなみにジョン・リードは、史実ではチフスが死因だが、当時、戦時にはチフスで多数の人が死亡した(映画ではチフスのことには触れられていない)。
本作では、ジャック・ニコルソン(役名オニール)が抑えた演技でダイアン・キートン(役名ルイーズ)に対して大人の姿勢で接するのが魅力的だが、以下のセリフは切ない。

What a heartbreaker you are, Louise.
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