善良な市民のあいだにヒステリーが醸造される様子を示すモンタージュが見事だった。逮捕されたアーサー・ケネディの無罪を唯一信じるダナ・アンドリュース扮する地方検事は、目撃者たちの証言を執拗に繰り返させ、不審点があきらかになったところで証言をぶった切るというある種の活劇的な弁論でこれに立ち向かうのが面白かった。しかし、リー・J・コッブ扮する警部のキャラクターが現実的過ぎて身もフタもないな。なんとなく犯人逮捕について疑義は持ちつつも、上司や市民からのプレッシャーに押し切られ、自白の強要を迫ってしまうという……。つい、うがった見方をしたくなる。
ニコラス・レイ『暗黒への転落』のラストショットの構図がほとんどそっくりなのに(空間的な拡がりは異なる)、その意味合いがまったくの逆だったのが興味深い。