けんけん3号

ザ・ファイターのけんけん3号のレビュー・感想・評価

ザ・ファイター(2010年製作の映画)
3.9
予備知識なしに鑑賞。ただのボクシング映画かと思いきや非常に見応えのある人間ドラマだった。しかも、実話ベースで人間模様がリアルだった。そしてメインキャラクターが役者とピッタリ合っていた。特にクリスチャン・ベイルの演技が凄かった。いかにもっていう感じの痩せ方、目の動かし方、会話中に口を小刻みにパクパクしたり、後頭部が円形のハゲだったり。それらを見た時、完全にドラッグ中毒のディッキーが憑依してると思ってしまった。アカデミー助演男優賞も納得。シャーリーンを演じたエイミー・アダムスも良かった。バーで登場した時の姿。お尻に目がいくが、ショートパンツにのった少しポテっとしたお腹の具合、いかにも気の強いバーテンという感じが良く出ていた。このインパクトのおかげで、その後のシャーリーンのキャラに我々もすんなり入っていけた。マーク・ウォールバーグも身体を見事に仕上げてたし、動きが本物のボクサーだった。悩める弟も見事に演じていたと思う。母を演じたメリッサ・レオの強烈な個性も見逃せない。ローウェルの誇りだったが、いつの間にかローウェルの呪いにかかってしまった兄。その兄と過去の栄光にしがみつくワンマンな母の間でもがく弟。そしてその弟の恋人もくすぶっている。家族という繫がり、良い方向の時はいいが、悪い方向の時は、こんなややこしいしがらみはない。それを痛感する作品。ディッキーがローウェルの誇りを捨て、自分を受け入れてから好転していく。そんな彼らが、もがきながら、ぶつかり合いながら再生していく様子が上手く描かれていた。それがあるので、後半ラストのボクシングの闘いは盛り上がる。ボクシングのシーンも本物さながらのファイトのようで興奮した。ディッキーのアドバイスでミッキーが息を吹き返し反撃するシーンは興奮したし、チャンピオンを倒すシーンは圧巻だった。ラストのディッキーの涙も印象的。ボクシング映画史上に残る名作の1つだと思う。
もっと早く観ればよかった…。