ぬまち

王女メディアのぬまちのレビュー・感想・評価

王女メディア(1969年製作の映画)
4.5
素晴らしい作品だった。パゾリーニの中でも個人的にかなり上位の部類に入りそう。

冒頭のコルキスでの「生贄と再生」の儀式の場面からして圧巻だ。生贄の少年が斧で切り刻まれ、その血肉を草木に塗りつける様子を、台詞を排したドキュメンタリータッチで丹念に描いている。ここから一気にこの古代の神話世界に惹き込まれてしまった。

ロケ地がトルコのカッパドキア(死ぬまでに一度は行ってみたい!)やシリアの城塞、音楽が日本の長唄になっていたりとカオス。描かれている題材が、時代も国も超えた普遍的なものであることを示しているようだ。

稀代のオペラ歌手マリア・カラスの唯一の映画出演作らしいが、その存在感は抜群。

パゾリーニは一般的には『ソドムの市』のグロテスクさでもって語られがちだが、こういった優れた作品も多く残しているので、勿体ないことだと思う。
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