アニマル泉

山中傳奇のアニマル泉のレビュー・感想・評価

山中傳奇(1979年製作の映画)
4.2
キン・フーが宋時代の古典「西山一窟鬼」を映画化した3時間あまりの大作。「空山霊雨」と同時に韓国ロケで二本撮りという離れ業で制作された。キン・フーの作品で唯一武侠アクション映画ではない。道士やキョンシーが妖術を駆使する、後のツイハークにつながるファンタジーである。冒頭は雄大な山、川、太陽、月といった自然がしつこく重なって描かれる。本作はスモークや煙が重要である。無人の広大な寺院が舞台だ。溝口の「雨月物語」みたいな物語が展開される。前半はかなりスローペース、なかなか話しが定まらない。科挙の試験に落ちた雲青(シー・チェン)が写経のために山奥の廃寺へ行く。「侠女」と似た設定だ。本作は「侠女」の蜘蛛と同じく昆虫や生物のカットが挿入される。シー・チェンとシュー・フォンが結ばれる場面、太陽から祝言の膳、重なる肌、蜘蛛に絡みとられる餌食、跳ね上がる鯉の群れ、トンボの交尾、などがモンタージュされるベタな暗喩に唖然となる。雷と大雨もキン・フー好みだ。後半の妖術対決は太鼓や笛などの楽器で相手を苦しませる。キン・フーの弱点は構成力だ。毎回グジャグジャになる。本作も後半にそれぞれの人物の経緯が唐突に描かれるが説明臭い。いまさらコレか?の感じがする。
アニマル泉

アニマル泉