efn

美女と液体人間のefnのレビュー・感想・評価

美女と液体人間(1958年製作の映画)
3.8
 動くはずのないアメーバが動くべき服や靴が静止する、この映像でしか表現しようのない光景を映画の素材にしてしまうあたり、やはりフラハティ世代なんだろう。
 ノワールのような照明のアパートや薄暗い地下水道を這うように移動する液体の気持ち悪さよ。ライティングとスライムのスローモーションの相性が絶妙で、液体でありながら「生き物」の質感が確かにある。それが天井から「落ちるように」、時には床から「立ち上るように」襲い、同化させて「泡のように消してしまう」。どれも自然現象なのに、衣類や地下水道といった人工物を合わせることで異様な雰囲気を醸し出している。首のあたりからブクブクと泡を立てるショットのおぞましいこと
 惜しいのはシチュエーションか。規模が小さいからゴジラのような大状況(戦争)を設定できないとはいえ、フィルムノワールにすることはなかったと思う。幽霊船という魅力的な場面もあるのだから、そちらの物語を膨らませてほしかった。マタンゴのあとであれば...とちょっと思ってしまった。
efn

efn