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コールド・フィーバーのnozomiのレビュー・感想・評価

コールド・フィーバー(1995年製作の映画)
3.7

日本の普通のサラリーマン・平田アツシ(永瀬正敏)は、7年前学術調査でアイスランドにいた両親を事故で無くしている。

彼は正月休暇をハワイで過ごすつもりだったが、自宅で両親からのビデオレターを観たことから、両親が亡くなった場所で供養したいと思い直す。

「春にして君を想う」の監督をつとめ、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のプロデューサーに携わったフリドリック・トール・フリドリクソンによる、日本人男性がアイスランドを訪れ旅をするロードムービー。

フリドリクソンの前作「春にして君を想う」も以前に拝見いたしましたが、アイスランドは季節によってこんなにも表情が変わるのか、と思いました。

前作の春の生い茂る緑と花々は一体どこにいってしまったのか、と思うくらいに、終始辺り一面真っ白な雪の景色が映されていました。それも美しかった。

画面の比率の使い方も非常な効果的だった。東京の雑多とした街中や人々をあえて小さい画面で見せることによって狭苦しく感じさせ、それに対してアイスランドの場面では、画面を広くし、アイスランドの広大な景色をより開放的に見せている。


そして監督の描きたかったのは“死”の概念についてでしょうか。

死者を弔うこと。それを平田は劇中で「家族の義務」と言います。その場面に登場する女性は「義務であって当然。けど、深い悲しみを学べる。けど皆その事を忘れる」と返します。

亡くなった人々を思い出し、その思い出に浸り、懐かしむことも、悲しむことも、とても大切ですよね。忘れがちになるのもしょうがない事なのだろうけど。

フリドリクソンの映画には前作も然り、精霊や天使が登場する。だからどこか現実離れしたファンタジックさも感じる。

切なくて、不思議な映画でした。
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