映画が終わって、照明がついた瞬間、場内から拍手が巻き起こった。
少し控えめな拍手ではあったけれど。
僕も、少し控えめに拍手を送り、心の底からほっとした。
こんなにも、この作品を楽しんでいた人たちがいたことに。
僕の揺らいでいた気持ちが確信に変わったことに。
隣に座っていた青年はずっともぞもぞしていて退屈していたことは明らかだった。
確かに、アクションは古いし、ギャグも古い。
だって、40年前の映画だもん。
でも、今回ほど、この作品の楽しさを誰かと分かち合いたいと思ったことはなかった。
レイ・チャールズの弾むようなピアノ。
思わず踊り出す子どもたち。
彼のサングラスにピアノの鍵盤が映り込む。
まるで何かが見えているかのようだ。
楽しくノリノリで踊るこどもたち。
僕も見よう見まねで踊りたくなる。
(いや、きっと足をくじく)
ステージに遅刻するブラザース。
二人のピンチを救ったのはやっぱり彼だった。
幕が開いた瞬間、突然、真っ白なタキシードに身を包んで現れるキャブ・キャロウェイ。
しびれて、涙が出てくる。
僕も、あのパレスホテルのボールルームにいる。
2ドルといわず2000ドル払ったって構わない。
(そんなお金はありません)
バンドを従えた華麗なパフォーマンス。
彼のコールに大声でレスポンンスしたい。
(きっと舌を噛む)
ダウンタウンのストリートで、ジョン・リー・フッカーが歌っている。
彼が映るのは1分もないだろう。
でも、彼の、渋く艶やかな声が聞こえてくると、じっとしていられない。
boom boom boom♪
how how how♪
一緒に足を踏み鳴らそう。
コメディーパートも僕には楽しくてしょうがない。
キャリー・フィッシャーに建物ごと吹き飛ばされるブラザース!
でも、崩れたレンガの下からガラガラ音を立てて出てきて、
何事もなかったように、「仕事の時間だ!」
ほとんどドリフのコント。
あきれるほど積み重なるパトカーのアクションシーンも、
ほとんどドリフのコント。
エンドロールの間、僕は隣の青年に気づかれないように、
少し、体を左右にシェイクしていた。
スクリーンに映る楽しそうな製作スタッフと一緒に。
心の中で歌いながら。
I need you you you!
I need you you you!
老人ホームに持っていく作品2作品目決定。
「I am Sam」で思いっ切り泣いて、
「The Blues Brothers」で入れ歯が飛ぶほど笑ってやる。
映画館から降りるエスカレーターで、後ろの若いカップルが
「スゲー、よかったよな!」
と言ってて、うれしくてうれしくて思わずそこでタップを踏みそうになりました。
(いや、踊れません)
「The Blues Brothers」新宿ピカデリー爆音上映会20191003