まちゃん

太陽を盗んだ男のまちゃんのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.0
冴えない日々を送る物理教師の城戸誠にはある計画があった。それは原発からプルトニウムを盗み出して原爆を作ること。そして計画は実行された…。原爆という恐ろしいテーマを持ちながらもその印象はどこかコメディ的だ。静止画を連ねて表現される原発襲撃シーンはゲーム的な軽さを感じさせ、城戸のアパートに作られた実験室は手作り感に溢れてユーモラスだ。しかし一方では放射能の恐ろしい影響も描写される。命を落とす猫、抜ける髪、歯茎の出血。このギャップが独特の雰囲気を作っている。この印象は主人公城戸にも感じられる。城戸は安定した仕事があり決して社会の落伍者という訳ではない。しかしその心には深い空洞がある。主演の沢田研二は現代的テーマを持った複雑なキャラクターを好演している。特に原爆完成の瞬間、ガイガーカウンターをマイク代わりに歌い踊る姿は歓喜、情熱、孤独、狂気を同時に表現した名シーンだ。一方の菅原文太演じる山下警部は仕事に対する責任感、使命感に溢れ、肯定的な人生観を持った人物だ。テンポの良いストーリー展開で繰り広げられる対称的な二人の対決は目が離せなかった。爆発的なエネルギーを感じさせる快作。
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