記憶を見るか、時間を追うか。
「テネット」鑑賞後に鑑賞。
ノーランの作品は大好きだし、むしろなぜ今まで見なかったのか。
以前チャレンジしたときは眠気に勝てなかった。
しかし、今回見たタイミングが「テネット」を見た直後で、
時系列を巧みに操る複雑で小難しい作品を見る欲に飢えていたというか、
とにかくついに見ることができた。
演出の仕方はとりあえず置いておき、
恐らくこういうサスペンス作品の流れとして、
冒頭シーンで銃を撃った人物は何となく見えていたのだが、
段々と見ていくうちに登場するほかのキャラクターたちと主人公の関係、
事件の概要、主人公の記憶、メモ、タトゥー、写真…。
どれもリンクしているようで、でもまだその段階ではつながりが
はっきりとは見えてこない。
巻き戻してもう一回、という欲を抑えつつ最後まで鑑賞。
なんだこれは。ノーラン、なんだこれは。
この時からやりたいこと、大して変わっていないじゃないか。
面白い。
舞台が夢の中なのか、近未来なのか、はたまた手品師バトルものなのか、
その違いだけで、時間と記憶にまつわる作品が好きなだけだ。
この作品を見る人を、主人公と同じ状況下(記憶が数分しかもたない)に置きつつも、
その主人公とは違って見る人(のほとんど)は記憶が保てる。
よって記憶を辿りながら事件の真相が見えてくる。
主人公も映画の最後(最初)で自分がしてしまったことを理解するが、
その数分後にはまた記憶が無くなってしまう。
我々はすべてを知ってしまうが、彼は何も知らない。
素晴らしい作品を見たという満足感と共に、
彼のことを思うと底知れない虚無感、絶望感のようなものに襲われる。
今後も彼のまわりには大量のメモ、そして体にはまたタトゥーが
増えていくかもしれない。
しかし記憶は何一つ残らない。そして妻を殺した犯人を追い続ける。
彼の物語はまた振出しに戻ってしまう。
どこがどうおもしろいと人に語るのは難しい。
でも時間と脳みそに空きがあれば、ぜひ見てほしい。
映画が好きなら楽しめるはず。