磯部たくみ

メメントの磯部たくみのレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
3.4
クリストファー・ノーラン監督の出世作であり長編映画第二作品目。少しヤンチャなキャリー=アン・モスがめちゃめちゃ良かったです笑

綺麗につぎはぎされており、非常にノンリニア。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」(原題: Arrival)を想起させますが、「メッセージ」はリニア構成が最後まで形(なり)を顰めているのに対し、本作はリニア構成を主軸とすることで、スペクタクルに昇華させたのかなと感じます。うろ覚えではありますが、人間臭さや伏線の置き方は、東野圭吾の「夢幻花」に近いものを感じました。

ミスリードを多く描くことで、情報不足から情報過多となる物語中盤に花を添え、終盤ミスリードがミスリードだったことに気付いていく様は、なんとも面白く、「しまった!」と思ってしまいました。モノクロシーンを挟む毎にキャラクターの印象がガラリと変わるのは、ノーラン氏の素晴らしいハンドリング力だなと、撮影はどういった感じだったのか気になってしまいました。

ただ、カラーとモノクロでのノンリニア構成と順番がミソなのかなと思い始めてからは、物語自体が基本単調だからなのか、少し中弛みしてしまったように感じました。(当然頭はフル回転なのですが笑)
直近のノーラン氏の魅力でもある映像美も、あまり感じられず(ホイテ・ヴァン・ホイテマのタッグは2014年からですしね)、何回も観たいと思うかと言われると、作品柄的にも少し違うかなと思いましたが、初見時の驚きはやはり凄かったですし、また観て色々気付きたいなと思っています。

限られた情報のみで各々のペルソナを創り上げ、それが余りにも脆く、崩れ去っていくのが非常にスリリングで面白い作品でした。現実世界で、我々が日々出会う人々のある面を見て判断することの危険性や、いかに情報が脆弱性を孕んでいるかを警鐘しているようにも感じ、四半世紀前の作品ではありますが、現代のオンラインコミュニケーションや、浅い関係構築への一種のアンチテーゼのようにも感じたノーラン監督の出世作でした。
磯部たくみ

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