えびちゃん

やさしくキスをしてのえびちゃんのレビュー・感想・評価

やさしくキスをして(2004年製作の映画)
3.5
甘美なタイトルとキーヴィジュアル、ただし監督はケン・ローチ。他作品より絶望度は低めだがまごう事なきケン・ローチ。ラブストーリーであるのに、やさしく甘くなんてあるはずもなく、相変わらず社会における弱者に焦点を当て誠実な距離感をもってビターに描く。
カトリックのロシーンとムスリムで移住者のカシムが出会い、惹かれ合い、葛藤し、そして家族を巻き込んでいく。宗教、そこからつながるコミュニティのしがらみ。大多数が葬式仏教徒の日本では考えられないほど強固なしがらみに生きづらさを想った。宗教とは、人を幸せにもするし、足枷にもなる。信仰選択の自由がなければなおさら。それでも信仰を捨てない、神を信じている、という信心深さ気高さは理解できるものではなく素直に尊敬に値する。
" 人は天使より気高くも 犬よりも下等にもなる "
カトリックやムスリムから強い反発がありそうな内容だけど、誰にも媚びず常に我々に問いかけ続けるローチ監督の視線が好きだ。
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