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天国と地獄のmyjstyleのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
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昭和30年代の東京や横浜は、外人の多い猥雑な飲み屋の場末感とか麻薬中毒者が蝟集するスラム街などまるで異国のようです。湘南も木造平屋が密集し、犯人はこの界隈の夏は暑く冬は寒くて眠れないアパートの2階に住んでいます。高台に聳える白亜の豪邸を見上げては恨みを募らせていました。大企業の重役(三船敏郎)の館です。彼の息子と間違って使用人の子供が誘拐されます。身代金の3千万は、食堂の天丼が100円とあったので、今なら3億円位でしょうか。この筋違いの身代金を自らが破産してまで支払えるか、と問うヒューマンドラマです。金持ちに反感を持つ刑事たちが次第に三船に心を寄せていく描写が丁寧でした。残念なのは、山崎努演じる犯人象です。苦学して手に入れた医師免許を失うリスクを犯してまで誘拐や殺しをする必然性が描かれていません。これでは単なるサイコ野郎です。犯人のプロファイルが甘く、画竜点睛を欠きました。
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