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天国と地獄のtackyのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
4.8
何度も見たくなる日本サスペンス映画の基礎にして、見事な三部構成の作品である。

まず前半は、屋敷内ワンシチュエーションで展開され、冒頭見下ろす街の喧騒が聞かれるが、冷房をつける為窓を閉めると、外の音が遮断され、音楽も無い。まるで閉鎖空間に閉じ込められているような、息苦しさに、誘拐事件が絡んで、淡々と進む。

そして、一発撮りの新幹線での金の受け渡しから、救出までを一気に魅せる。救出の際についに音楽が流れるところで、ビックリするが、気分が解放される。

そこからは、後半犯人と警察の丁々発止の捜査に手汗握る展開となり、ラスト、クライマックスの有名な面会シーンになり、唐突に終わり、観客は置いてけぼりにされる。

この緩急折り込んだ演出に、目が離せない作品となった。

その後、模倣犯が出てくる程、社会にも多大な影響を与えた作品である。(実際、吉展ちゃん事件の犯人も、この映画の予告編を参考にしていたらしい。)

ただ、有名な戸倉警部の正義感の押し付け問題だが、黒澤は制作にあたって、警察にリサーチしていて、かなり誇張はされているものの、この当時はこういう捜査が数多くされていたようで、決してフィクションでは無いそうである。恐ろしい時代だったと思う。

オールスターキャストで、素晴らしい作品だが、特に三船敏郎、仲代達也と互角に組んだ、新人大抜擢の山崎努の素晴らしさは、筆舌に尽くし難い。
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