ピッツア橋本

天国と地獄のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
4.7
“天国は幻。あるのは生き地獄と蟻地獄のみなり!!”

大手製靴会社の重役たち表向きは売上報告会議、実質は株式をかけての権力闘争、地位転覆を狙う会合をしている。
靴職人であり、常務である三船敏郎はほか3名の重役達との結託を断る。
その根拠には彼の全財産5000万を投資してこっそり買い集め準備していた株式で一気に社長になるという戦略があった。

だがしかし!その夜、突如三船邸に電話がかかってきた
「あんたの息子は預かった。返して欲しければ3000万用意しろ」
マジかよ!でもあれ待って?ウチの子ちゃんと居るんですけど…もしかして誘拐する子、我が召使いのせがれと取り違えてません?
じゃあ俺が身代金払う義理あります!?
だって俺、人生賭けたマネーゲームこれからやるんだよ!?お金なんて無理無理!


といった展開。
後半些かふざけてあらすじ書いたけど、さすが黒澤映画!超濃厚社会派サスペンスである。

55年前の映画なのだけれど、普遍的な人間の業をべっとり描きつつ、軽快で練られたシナリオがどっしり構えているため全く古く感じない。
レベルの高い奥ゆかしさと共感を与えてくれる。

1963年製作なので、時代的にカラーであっても良いのだけれどやはり黒澤映画は白黒だよね!
って感じで陰影の濃淡や、群像劇を意識した品のあるカメラ距離感がバツグンに侘び寂びを効かしている。
ストーリー構成上、絢爛豪華というよりは土着性のあるステージ選択に重きが置かれていて、どや街とかはもう匂い立つ悪さが画面から香ってくる。

役者陣もパーフェクトに良くて、ベテラン若手刑事の仲代達矢、富豪の三船、そして若き日の山崎努の大迫力。かつ一体感があって驚く。

ラスト五分のあの感情と理性が入り乱れる描写がなんともやり切れない。怖い。胸がチクチクする。

これぞ名作!って感じの一本です。
ピッツア橋本

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