茶一郎

すてきな片想いの茶一郎のレビュー・感想・評価

すてきな片想い(1984年製作の映画)
4.0
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』から『スパイダーマン ホームカミング』、『デッドプール』と、最近はその多大な影響がハリウッド超大作にまで見えるようになったティーン・コメディのパイオニア=ジョン・ヒューズ監督。その監督の長編監督デビュー作が、本作『すてきな片思い』です。
 
 冒頭から明確に線引きされている「イケてる奴」と「イケていない奴」のグループ。「イケていない奴」のグループに属している本作の主人公サマンサが、「イケてる奴」グループのイケメン・ジェイクに叶わぬ恋をするというお話が、この『すてきな片思い』のメインストーリーです。
 言うまでもなくジョン・ヒューズ監督は、ティーン・コメディに「スクールカースト」を持ち込んだ発明家。その「スクールカースト」にまつわる物語が特に顕著なのは代表作『ブレックファスト・クラブ』で、まるで本作『すてきな片思い』はその『ブレックファスト・クラブ』の助走のように『ブレックファスト・クラブ』より単純化された「スクールカースト」がテーマとなっていました。
 
 物語の骨格は、『アメリカン・グラフィティ』、『バッド・チューニング』、最近では『アメリカン・スリープオーバー』と同様の、いわゆる「一夜モノ」。しかし本作『すてきな片思い』は、「青春の最後の夜」を描いた三作のように登場人物たちの閉ざされた可能性を描くのではなく、あくまでもコメディとして登場人物たちの開けた可能性・青春の真っ只中の多幸感を描きます。そしてジョン・ヒューズ監督らしく、保護者不在の夜に異なるスクールカースト同士の少年少女が混ざり合い、互いの価値観を共有する事で彼らは成長していくのです。

 正直、ステレオタイプすぎるアジア人の描写など、今見るとクドく不快な描写も無い事はないですが、ジョン・ヒューズ監督の差別的で無神経な演出な多く語られている事ですので、今回は言及を控えます。
 とにかく明るくて、ハッピー。この楽天的なジョン・ヒューズが描くような青春世界こそ、現代を生きる我々が80年代に憧れる理由の一つではないかと思うほどです。
茶一郎

茶一郎