Junichi

EUREKA ユリイカのJunichiのレビュー・感想・評価

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)
4.5
「生きろとは言わん。ばってん、死なんどいてくれ…」

【撮影】9
【演出】9
【脚本】8
【音楽】9
【思想】10

宮﨑あおいで始まり
宮﨑あおいで終わる作品
青山真治監督の傑作です

導入パートでバスジャック事件の描写がなされ
前半パートはバスジャック事件で生き残った三人の日常が丁寧に描かれ
後半パートでマイクロバスによるロード・ムービーになります

後半パートは
キャンプブームや車中泊ブームの昨今からすると
とても楽しそうです

バスジャック事件で生き残ってしまった三人(役所広司、宮﨑あおい、宮﨑将)
PTSDを抱えつつ日常を生きねばならない有り様が丁寧に描かれます

生き残ったということは
死ねなかったということ
死ねないということは
生き続けなければならないということ

普通の人にとっては当たり前の【生き続けること】が
犯罪被害者にとっては地獄にいるかのように苦しい

生きることは誰にとっても苦しいのですが
苦しさには人によって度合いがあります

犯罪被害者にかぎりません
学校で虐められたり
職場でパワハラを受けたり
尊厳を傷つけられた経験のある人は
こうした人生に追いやられることが往々にしてあります
(傷つきの感受性の強さは人により異なります)

本作品がセピア色で表現されているように
日常から色が無くなり
世の中からの解離を体験します

本作品はこうして傷つけられた魂の再生の物語です

三人が同居するパートではコメディのような演出があったり
3時間半の作品でありながら無駄な描写がひとつもなく
演出や構図にこだわりを感じさせる
見事な作品だと思います

満点の5点でなかったのは
・とはいえさすがに3時間半は長すぎる(首、肩、腰が相当凝ります)
・話の展開に強引なところ(結論へと力技で結びつける)がある
・のわりに物語の閉じ方に迷いを感じさせる(宮﨑あおいに頼りすぎ)
などなどがあったゆえですが
傑作であることに間違いはありません

なかなか観る機会の少ない作品かと思います
劇場でやっているときは是非ともチャンスを逃さないでください
劇場で観ることをオススメします
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