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EUREKA ユリイカのmotoietchikaのレビュー・感想・評価

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)
4.6
壁を弱くノックする音。切々と響く空虚な音。
北九州サーガ第2作。過去のバスジャック事件の生存者である兄妹、元運転手の静かな交流。過去のトラウマからの癒しと再生。
主役3人の視線がずっと過去しか捉えていないようなツラが最高。
色彩のない田村正毅のカメラアイがそれを支えている

役所広司が兄妹のもとを尋ね、二人のことを支えようとするのだけれど、その実むしろ支えられていたのは役所広司のほうだった……という逆転のプロット。
宮崎あおいが奇跡的に薄倖な美しさで、彼女が役所広司の頭を撫でるシーンは『ミツバチのささやき』のアナ・トレントに肉薄していると思う
事件の生存者でありながらも共犯的な意識に苛まれているような、共依存的な関係がいい。
その場にもう一人、事件とは直接関係のない秋彦というキャラクターが闖入することで関係性が心地よく乱され、整えられてゆくさまが救い。こいつの台詞はちょっと説明的すぎるけど

虚無の瞳だった宮崎あおいが次第に感情を露わにしていく過程でなぜか涙があふれた……

「生きろとは言わん。ばってん、死なんでくれ」

なお、この兄妹を演じたのは宮崎将&宮崎あおいのリアル兄妹。マジか。この二人が共演している作品は他にもいくつかあるらしく、観なければならない

北九州から阿蘇への風景がまさに巡礼の旅で、ちょっと長すぎてダレるところもあるんですが、ラストでの宮崎あおいの遊びのような神性に至るところで完全に納得した
突発的に旅に出る映画は最高、というジンクスありますよね?
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