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アイアン・ジャイアントのsomaddesignのレビュー・感想・評価

アイアン・ジャイアント(1999年製作の映画)
5.0
人は鏡。巨大ロボの変化を通じて少年の成長を見る。
ジュブナイルをすっかり親目線で見てる、オッサンな自分に気づく。

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米ソ冷戦・宇宙開発競争盛んな1957年。ソ連から人類初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられた同じ頃、メイン州の小さな町に住む9歳の少年ホーガースは「金属製の巨人が空から降ってきた」という話を耳にする。宇宙人の存在を信じるホーガースは、夜中に家を抜け出し、空から来た巨人を探しに行く。

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この際だから未見の名作をちゃんと見ようシリーズ。

今やすっかりアニメの偉人となったブラッド・バード監督の長編デビュー作にして大傑作。
日本はもとより北米でも興行成績は奮わず、制作費すら回収できなかったそうで、DVD化してから徐々にクチコミで評価が上がった記憶がある。


少年と異世界の友達の交流を描いたベタなジュブナイルで、古くは「E.T.」、今なら「ヒックとドラゴン」によく似てる。のちにスピルバーグが「レディ・プレイヤー1」にアイアン・ジャイアントを出したのを考えると20年越しのアンサーみたいで胸熱。

すごくシンプルだけど、少年とジャイアントの交流を通じて生と死、社会と個人、無知と恐怖を考えさせる全方位向けに感動しちゃう。登場人物たちが明示されないけど悲しさを抱えてるのもいい。戦争で父親を亡くしたシングルマザー家庭だったり、芸術家志望だけど生活に負けたオッサンだったり、仕事でしか自分の価値を計れない役人などなど。

クラシックな描線をあえて採用して「ファンタジア」や「バンビ」「ピノキオ」を彷彿とさせるシーンもチラホラ。ジャイアント自身はCGらしいけど、CGっぽさを消して手描き風の質感にしてるのも当時としては珍しい。バード監督の原点回帰っちゅーか、ディズニークラシック趣味全開の作画だと思う。

のちのブラッド・バード監督作に通じる「自分が何者であるか決めるのは自分」「天賦の才に恵まれたなら活かすべき」「大人はわかってくれない」……といったエッセンスはデビュー作から一貫してた。
(「バカは人の話を聞かない」も処女作から入れてるし😅)

作品の出来以上に、今作で一躍名を挙げたブラッド・バードの以前以後を知ってて見たのでより熱かった。
11歳でアニメ作りを始め、14歳でディズニースタジオから注目されるほどの天才少年。ディズニーの伝説的アニメーター『ナイン・オールドメン』の一人ミルト・カールに師事するとカリフォルニア芸術大学(CalArts)を卒業後は満を持してディズニースタジオに就職。
ここまでは順風満帆なものの、結局ディズニーには短期間しか在籍せず長い雌伏の時を過ごす。(一説には当時のCEOマイケル・アイズナーのトップダウンでビジネス優先な経営方針。安易な続編や粗製乱造に嫌気がさして辞めたとも。同時期にティム・バートンやピクサーのジョン・ラセターも辞めてたような)
結局、初監督作を作るまで20年近い回り道をたどってしまったけど、今見たら古き良きクラシックなディズニー愛溢れてて物語以上に泣ける。
——この後CalArtsの同級生ジョン・ラセターに誘われてピクサーで「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」他を監督。アカデミー賞長編アニメ賞などなどを受賞。2009年にはヴェネツィア国際映画祭でアニメ映画への貢献が評価されて栄誉金獅子賞を受賞。


90分弱のちょっと食べ足りないボリューム感も、クラシカルなディズニーアニメっぽくて良い。子供が集中して見てられる時間ギリギリっちゅーか。

(余談)
ジャイアントの声がヴィン・ディーゼルって今更知って笑った。「ガーディアンズ〜」のグルートよりはセリフ多いけど、やっぱこう…人離れした声と口調に聞こえるんだろうか?😆
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