こうきち

アイアン・ジャイアントのこうきちのレビュー・感想・評価

アイアン・ジャイアント(1999年製作の映画)
4.8
ただ鉄の巨人が現れるだけの話だと思ってたら、冒頭はスプートニクの映像から始まるし、子供は核攻撃のプロパガンダ見せられてるし…なるほど説得力、と思っちゃう。
「巨大ロボットが宇宙から降ってきた」というぶっ飛んだ(しかも何の説明もない)大枠の設定に対して、絶妙にマッチする/周りの大人のパニックぶりに納得できる時代背景を選んでいる気がするぞ。

おそらく主役は「鉄の巨人」じゃなくても虎とか改造人間とか、強けりゃ何でもいいんだよな。「人より腕っ節が強い奴は、その力を正しいことに使わないといけない」っていうドシンプルなメッセージが一番大事で、鉄の巨人が〜とか核戦争が〜とかは後付けの設定なんだろうな(だからアイアンジャイアントの出自には最後まで触れなかったのでしょう。それ描いちゃうとそれまでの娯楽作品になっちゃうし。)。
でも、それがただの後付けで終わってないのは、モチーフに「冷戦」とか「核ミサイル」みたいな、実際にアメリカ人が手にした「手に余る/災を呼ぶ巨大な力」を選んでるからであって、しかもそれががっちりハマってんだよな〜〜〜
ちゃんとアメリカ人が「自分ごと」として受け止められるように題材を選んでるんだよな〜〜〜王道だけどすげぇ上手だな〜

ラストのシーンは伏線を回収しつつ、面白いし、なんだかヘンテコなのに、泣ける。
爆発・粉々→「それでも彼は僕らの中に生きているんだ!」みたいなデッドエンドにしないで、アイアンジャイアントの復活をしっかり描く事で「正しいことをすると損して終わり」にしてないのが子供向け作品として何より良い。
ボルテージが最高潮に達した瞬間に惜しみなくカラッと終わるのでニクい!理想的。
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