つかれぐま

影武者のつかれぐまのレビュー・感想・評価

影武者(1980年製作の映画)
-
次作『乱』へ向けての習作。

武田信玄の死後3年間、その影武者を立てることで、武田家内外にその死を隠し通した話。絢爛たる戦国絵巻だ。

ポール・スミスは、本作と次作『乱』に影響を受けたそうだ。モノクロイメージの強い黒澤明のカラー作品が、世界的服飾デザイナーをインスパイヤしていたとは面白い。アースカラーに入った赤い差し色が、確かに美しい。

そういう「静」の美しさに対して「動」の面白さが今ひとつ。本来の黒澤作品の肝が欠けた、良くも悪くも絢爛たる戦国絵巻に過ぎない物足りなさ。主演俳優の交代、音楽の不出来(軽すぎ!)、そして監督自身の思い入れが、既に次作の『乱』に移っており、そのための習作に留まってしまったように見えてならない。

地を駆ける馬🐎は風のように疾いが、その馬群が一体どこに向かっているのか?分かりにくいのが象徴的だ。