回想シーンでご飯3杯いける

RENT/レントの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

RENT/レント(2005年製作の映画)
2.0
LGBT、ドラッグ問題、エイズ、貧困等を題材にしたロック・ミュージカルの映画版。オープニングで全キャストが揃って歌う「Seasons Of Love」の時点で、もうかなり良い。ピンスポットを効果的に使った構図は、これがミュージカルを原典とする作品である事を的確に表し、瞬時に僕達を作品の世界観に連れて行ってくれる。

しかし、、、、2曲目の「Rent」から、いきなり'80年代風の産業ロックになってしまい何だか微妙な雲行きに。結局、ラストに至るまでこのノリが延々と続く事になる。「Seasons Of Love」が良い感じに思えたのは、アカペラ中心のアレンジだったからなのだろう。他の曲もボーカルだけを聞けば悪くないのだが、合成甘味料を使ったような大量生産の味がするアレンジばかりが続いて、正直辛かった。

産業ロックそのものが嫌いと言うわけではない。ただ、ボヘミアニズムに生きた芸術家や音楽家を描いた本作品には全く似合わないと思うのだ。同じ時期にミュージカルと映画で製作された「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(テーマは同じくLGBTだ)や、ストリートミュージシャンを描いた「ONCE ダブリンの街角で」で掛かっていた、飾り気の無いDIY精神溢れる音楽と比べれば良く分かる。

また、スピリチュアル寄りの観念的な台詞が多いのも気になった。これも、先に書いた音楽との悪い意味での相乗効果が働き、どうも嘘っぽく聞こえてしまう。

実は先述の「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の中で、バンドのメンバーが貧しいツアー生活から抜け出す為に「RENT」のオーディションに応募するシーンが登場する。パンク・バンドを描いた「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の世界では、「RENT」は良くも悪くも、既に大衆に受け入れられた商業的なミュージカルとして捉えられている事が何となく伝わってくるシーンだ。今回こうして実際に観た「RENT」は、まさにそのイメージ通りの作品だった。