実はフロリダプロジェクトの直前に観ていました。
貧民層、HIV、LGBTと、登場する人物のほぼ全員が何かしらマイノリティな立場の中で、180度表現の異なる作品を意図せずチョイスしていたという偶然。
思うままに生きることを、溢れるエネルギーで紡がれるミュージカル。元がブロードウェイミュージカルですから、華があり躍動感も強い。全く音楽のないフロリダプロジェクトと、これまた対極的。
何せ体感で全体の7割くらい歌で構成されていますからね。これでも映画用に歌を少なくしているというのだから驚き。ショー、エンターテイメントとして物語は薄味にと言うわけでもなく、登場人物たちの想いは全て歌に、歌詞に、メロディーラインに載せて語られていると言うべきでしょう。
本作において、最も強いメッセージ性を感じた人物は「エンジェル」でした。彼女(彼)もまた、性同一性障害と病を抱えた人物ですが、そのことに悲観する発言は見られない。過去や未来でなく今を生きる。「一年」ではなく「52万5600分」。掛け替えのない今という瞬間を生きることに関して、彼女は最も真摯に今と向き合っていたなと。
若さゆえの反発や、やっかみ、衝突もありつつ、彼女が作った絆は紡がれ、危なっかしくも、未来に繋がっていく。
とは言ってみたものの、やはり本質はミュージカルであり、ショーの締める重要性は明らか。奏でられる楽曲の好き嫌いに本作の好みは委ねられるのでしょう。
ロックでポップでキャッチーな曲の数々。僕は好きですよ。コテコテのミュージカルも好きですが、そういうのが苦手な方にも取っつきやすいように思います。
背景の人物も全てショーに組み込んでいた「美女と野獣」や「グレイテストショーマン」と比べると、歌い手が主のミュージッククリップに見えなくもないです。歌に重きを置いているゆえでしょうね。