みおこし

百萬圓貰ったらのみおこしのレビュー・感想・評価

百萬圓貰ったら(1932年製作の映画)
3.4
世界で初めて”オムニバス”という手法が取られたという記念すべき1本で、当時のパラマウントのスターが集結した作品。各エピソード、ルビッチやタウログなど有名な監督が手掛けています。

億万長者のグリッデンは病に伏しているが、彼には遺産を相続すべき親族がいなかった。そこで電話帳からランダムに選んだ見ず知らずの一般人に100万ドルを渡すことを思いつく。思いがけず100万ドルが当たった者たちは、それぞれ全く違った投資をするのだが…。

邦題は”100万円”になっていますが、実際は”100万ドル”なので1億円以上(しかも当時の価値なのでさらに高くなる)。なので、実際には人生が変わるレベルの大金が当たった設定になります。しかも当時のアメリカは大恐慌の真っただ中と考えると、より真に迫ったお話に感じられます。
ゲイリー・クーパー、ジョージ・ラフト、チャールズ・ロートン、メイ・ロブソンなどのスターが職業、階級、置かれている環境も全く異なるキャラクターを演じ、それぞれのユニークな100万ドルの使い方を描いていきます。
全編通してコメディベースではあるのですが、意外とみんなお金の使い方がシビア。ラフト扮するエディー・ジャクソンという指名手配犯は当然悪事に使おうとするし、メイ・ロブソンが演じた老婦人は自分が入居している老人ホーム(婦人会)の改革に使ってみんなを幸せにしようとしたり…と本当に様々。後味が悪かったのは、電気椅子にかけられる直前の死刑囚のエピソードで、「これ入れる必要あった…?」と思ったのですが、そうすることでより人生の悲哀を克明に描きたかったのかなあ。
ラストはほっこりするエピソードだったので少し救いがあったのですが、この辺りの緩急が激しすぎて感情移入があまりできず、全体的にちょっとバラついた印象を抱いてしまう作品でした。

でも大富豪から引退した老婦人、安月給のサラリーマンから貧民街の娼婦に至るまで、とにかくあらゆる階級の人々が登場するので、不況真っただ中のアメリカの人々の生活や社会が生々しいまでに体感できた点は興味深かったです。
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