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クリスマスのその夜にのslowのレビュー・感想・評価

クリスマスのその夜に(2010年製作の映画)
4.5
クリスマス・イヴの夜。願いと祈りを繰り返す小さな寝息を愛おしむ夜。今を生きることに暇がない人々は、どこかで奇跡めいたものを期待しながら、静寂の彼方で響く鐘の音に団欒の風景を想う。
クリスマス・イヴの夜。人々はその日、少しだけ自分に正直になれる。普段と違う景色を見たくて、その日に背中を押してもらうのだ。奇跡とは、変化の前触れ。但し、そこに笑顔は約束されていない。
クリスマスの夜。ある人は、いつかの選択を不意に思い出し、その答えに胸がいっぱいになる。いつもと同じはずの、またとない星空を眺めながら、それは奇跡だと信じたくなるのかもしれない。信じるべき奇跡も、この世にはあるのだ。

ベント・ハーメルにしては大人しい物語にも感じられたけれど、その余韻は間違いなく彼のもの。北欧の寒空の下で隣り合う人と人との奇妙な縁。少しずつ紐解かれる一つ一つの人生が淡いグラデーションとなり世界を彩る夜に、幸せと不幸せは同じ温度で語られる。とても、不思議な夜だ。
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