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グロリアのkaoruiのレビュー・感想・評価

グロリア(1980年製作の映画)
4.5
観逃して以来ずーっと観たかったこの作品をまさか小屋で鑑賞できるとは思ってもみなかった。午前10時シリーズにはもう足を向けて寝られない。
最高の映像体験だった。オープニングの水彩画からバスの動きに導かれるようなカメラワーク、そして球場を俯瞰してアパートまでの流れるようなショット。玄関、そして階段の殺伐とした絵。部屋から見下ろす球場の絵が再びフレームに入ってくる。二次元から三次元へ、水平から垂直へ、縦横にニューヨークを描く、巻頭から豊かな絵の連続でため息が出る。
そして嫁さんであるジーナの顔のアップの連続。綺麗だなーと思うショットは一瞬もない。徹底して無い。皺、贅肉、全体重を受け軋むハイヒール。僕が監督なら恐ろしくてできない。
友と交わした義理を越えて銃弾をぶっ放す、そのカット一発で彼女を貫く美学を活写する。
命綱である会計記録はタクシーに忘れようともガキンチョに任せ続ける。ひとりの男なのだ。
そして人生の重みを体重で表現するセリフ「アンタより何キロ重いと思ってるの。」
こうしたショット、セリフの積み重ねでグロリアのリリカルな生き様が画面に立ち上ってくる。
最後のシーンに母性などない。
一人の男と一人の女の確かな抱擁なのだ。
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