マヒロ

弾丸を噛めのマヒロのレビュー・感想・評価

弾丸を噛め(1975年製作の映画)
2.5
1900年代のアメリカにて、2000ドルを賭けた馬による大陸横断レースが開催される。参加者の馬を届ける仕事をしていたクレイ(ジーン・ハックマン)は動物をこよなく愛する男で、道中親を失い立ち往生していた仔馬を助けていたところ大遅刻してしまいクビを言い渡される。路頭に迷ったクレイは、そのレースに飛び入り参加することにする……というお話。

大金を賭けた馬での大陸横断という設定は、『スティール・ボール・ラン』に影響を与えてると思われる。大会本部が列車の中にあったりエンストする車を揶揄するセリフとか、細かいところもよく似ている。
荒野や草原、砂漠など様々なロケーションを亘り走る過酷なレースで、馬たちが泡上の汗をかきまくっているのがリアルにキツそう。
動物を虐めるやつには容赦なく鉄拳制裁をくらわす主人公のクレイのキャラクターも面白いが、そんなクレイの友人でギャンブラーのマシューズ(ジェームズ・コバーン)や唯一の女性参加者であるジョーンズ(キャンディス・バーゲン)、イキった若者のカーボ(ジャン=マイケル・ヴィンセント)他、イギリスからきた身分の高そうな男や歯痛に悩むメキシコ人など、様々な参加者が集まってくる序盤はかなり期待値が上がる。

ロケーション、設定、キャラクターの魅力と映画を面白くする要素のお膳立ては出来ているんだけど、不思議とこの映画、全然面白くなっていかない。
まず肝心のレースの描写が常にフワフワしているところが問題で、スタートの掛け声もなく気づいたら始まっているというヌルッとした導入も気になるし、そもそもどれぐらいの人数が参加しているのかも分からず、順位とかも特に発表されないので、全貌が全く見えてこず緊迫感がない。皆で仲良く焚き火を囲んだり一緒に川を渡ったり、全然競争意識が無さそうなのもなんとも。
編集や演出も、めちゃくちゃ長いスローモーションやどうでも良いシーンをカットせず延々見せてきたりと変にモタモタする所があり、いちいちテンポが削がれるのが気になる。

例えるなら、極上の料理を作れる素材が集まってきたと思ったらそれを生でバリバリ食わされたみたいな、もっと上手くやれば絶対良くなるのに……という勿体なさが感じられる映画だった。

(2021.136)
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